• 目次
  •    ① 小さなすずめ
  •    ② 波乱万丈の人生
  •    ③ マルチタレント
  •    ④ ステージ衣装の秘密
  •    ⑤ テオとの最後の恋
  •    ⑥ 私は後悔しない

①小さなすずめ


フランスのシャンソン歌手エディットピアフの歌声や曲は、CMなどで聴いたことのある人も多いでしょう。

近年では、美輪明宏さんの『愛の讃歌』や、大竹しのぶさんの舞台『ピアフ』も話題になりました。

『バラ色の人生』『水に流して』『群衆」』『アコーディオン弾き』『パダムパダム』などもヒットしました。

ピアフは、倍音を多く含む独特の声質を持ち、身体全体を使うような力強い地声の歌い方が特徴です。

加えて、ピアフのRの発音は『口蓋垂震え音』という巻き舌のような特殊な発音で、歌を個性的にしています。

声量があるので大柄な人なのかな、と思っていた私は、ピアフの身長が145㎝で40㎏と知って驚きました。

それもそのはずで、芸名「ピアフ」は呼び名でもあり「小さなすずめ」という意味だそうです。

少女時代から父と一緒に街頭に立ち、歌うことで日銭を稼ぐ生活は、歌い方に大きな影響を与えたはずです。

石畳の街角に立ち、道行く人達の足を止めるために、必死に大きな声で歌うピアフの少女時代が想像出来ます。

足を止めさせたあとにも、どういう風に歌えば人が聴いてくれるか、肌で感じながら実践していたことでしょう。

現に、彼女はインタビューで「私の音楽学校は街角なの」と答えています。

②波乱万丈の人生


ピアフの声や歌い方に憧れている私ですが、もし、悪魔が私の目の前に現れて、

「ピアフと同じ人生を体験するなら、ピアフの声を手に入れられるけど?」と言われたら、私は即座に断ることでしょう。

なぜなら、ピアフの人生は、あまりにも波瀾万丈過ぎて、とても辛いからです。

素晴らしい声の代償だったようなピアフの人生の辛い出来事を、年代順にざっくり挙げてみます。

・幼い頃から母親が育児放棄。

・売春宿で育つ孤独な少女時代。

・角膜炎で失明の危機に陥る。

・大道芸人の父と路上で歌う貧困生活。

・娘の日銭を搾取するダメ父親。

・少年と恋に落ち16才で出産。

・18才で、2才の子どもを亡くす。

・子どもの死後、少年とも破局。

・18才からアルコール中毒になり、酒に溺れる日々。

・歌っていた店の経営者が殺され、殺人の容疑者として逮捕される。釈放されるも、歌う場所を失くしてしまう。

・沢山の男性との恋愛と別れを繰り返す。(これは良いこと?)

・ボクサーのマルセルと大恋愛するが、彼の乗った飛行機が墜落して死別。

・占いなどに頼り、周りから大金を騙し取られる。稼いでいるのに借金まみれ。

・4度も交通事故を起こし、大怪我を負う。手術を繰り返し、身体は文字通り傷だらけ。

・身体の痛み止めとして使用したのがきっかけで、薬物中毒になる。稼いだ大金も麻薬を買うのに消える生活。

・晩年、病床で結婚するが、すぐ亡くなる。

飲酒、交通事故の怪我、薬物中毒、病気などで、ピアフの身体はボロボロで、40代でも老婆のように見えたそうです。

ピアフとテオのデュエット『恋は何のために』のレコードジャケット。
このワンピースがピアフの定番の衣装。

⑤テオとの最後の恋


ピアフは、沢山の男性と恋をして別れを繰り返す、いわゆる恋多き女性でした。

決して美人タイプではありませんでしたが、その場にいる人を惹き付けてしまう強いオーラを持っていたそうです。

一般的には、ボクサーのマルセルとの恋が有名です。不倫の恋でしたが、死別の苦しみは計り知れません。

でも、私は、ピアフの最後の恋が印象に残ります。ピアフは愛されることによって幸せだった、と感じるからです。

ピアフは、人生の最後に、20才も年下のハンサムでやさしいギリシャ人のテオ・サラポと出逢い、結婚しました。

二人のツーショット写真などを見ると、年の差があるためお婆ちゃんと孫にも見える程ですが、ピアフは幸せそうです。

ピアフの大ファンで美容師だったテオは、病床のピアフの元に足繁く通い、歌の指導を受けて歌手になりました。

二人のデュエット曲『恋は何のために』は、楽しげな曲です。声質は違うもののテオの歌い方はピアフと似ています。

二人は、夫婦愛というより師弟愛、またはソウルメイトのような関係だったのかもしれません。

どちらにせよ、テオの目には、ピアフの内面の魂の輝きや美しさが見えていたのでしょう。

当初は、「遺産目当ての結婚だろう」とテオを中傷する人もいましたが、実際のピアフは借金だらけでした。

テオは、ピアフという女性を純粋に愛していただけなのだと思います。

その証拠に、ピアフの死後、テオは、ピアフの作った多額の借金を、一人で6年間かけてコツコツ返済しました。

そして、完済したあとすぐに交通事故で亡くなりました。遺言通り、現在もピアフと同じ墓に眠っています。

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