数年前に、新聞などで、公立中学校や高校の英語教師の英語力不足問題が大きく取り上げられました。特に私が驚いたのは、公立中学校の英語の先生の大半(7割から8割)の英語力が、英検2級以下ということです。同様に、先生のTOEICのスコアの平均が560点というのも、英語の先生としてプロ意識が低いのでは、と感じます。残念なことに、英語の基礎を教える先生達の英語力には個人差があり、中には発音が悪い人もいるのが事実です。児童向けの英語教室に至っては、英検3級以下の先生も結構います。しかし、英語の発音は日本語とは全く違います。英語の母音と子音の種類は、日本語の倍以上もあります。基礎レベルだからこそ、より正確な発音をインプットし、英語の様々な音に耳を慣らしていく必要があるのです。発音はリスニングと直結しています。英語の音をきちんと聞き取れれば正しい発音が出来ます。だから、基礎の段階で最優先すべきは、『英語耳を作ること』です。「日本人は英語が話せない。」とよく言われますが、その一番の原因は英語耳が出来ていないからです。『英語耳』と聞くと、なんだか特別な耳のように思えますが、そうではありません。先生が正しい英語を話せば、それが生徒の脳にインプットされ英語耳になる、という当たり前のことです。しかし、もし、中学で英語耳が出来ていない場合は、その後どうなるでしょうか?英検、大学受験、TOEICなどのリスニングパートが苦手になり、頑張って勉強しても、合計点数が伸ばせません。高得点だと就職に有利とされるTOEICの試験では、全200問中リスニング問題は100問で、実に配点の半分を占めます!大げさでなく『先生の発音次第で、生徒の最終学歴、就職先、昇進など、人生が大きく変わってしまう』のです。
次に、私の英語にまつわる苦い経験をお話します。私は、公立の中学校に通い英語の授業を50代の男の先生に3年間教わりました。私の悲劇は、高校の英語の時間に起きました。順番が来た私が教科書を読み始めた途端、クラス中が大爆笑です。「なぜ?」と思っていると、後ろの席の子が「英語の発音が変。まるで茨城弁みたい」と教えてくれました。私の英語は、カタカナ英語を通り越して、茨城弁英語だったのです!当時、中学の英語の授業は、先生の発音のあとに生徒がリピートする形でした。何の疑いもなく真似していました。ピアノで鍛えた耳の良さが災いして、3年間の授業で、先生の発音がそのまま脳にコピーされてしまったのです。一度覚えた発音の癖がなかなか抜けず、毎回笑われるので、高校の英語の時間がだんだん苦痛になりました。当時の私は「英語の先生にだまされた」と腹が立ちましたが、怒りのぶつけようがありませんでした。この話をどう感じますか?公立校に通う生徒は、英語の先生の質を選べず、自分の運だけに頼るしかないのです。まるで、ロシアンルーレットです。どの先生に習うかによって、英語教育での大きな格差が生まれてしまうのです。
次に、脳科学者の茂木健一郎さんによる「英語と脳の働き」を調べた実験についての記事の要約を紹介します。脳には、「ミラーニューロン」という神経細胞があり、目の前の人間の動きを物真似するそうです。実験によると、ミラーニューロンは、録画映像では反応せず、目の前で英語を話す時に活性化したそうです。残念なことに、テレビやDVDはもちろん、スカイプでの英語レッスンでさえも、反応しなかったそうです。簡単に言えば、『生身の人間からの英語だと脳は本気を出す』ということです。この実験の結果から、『授業での先生の英語が生徒の脳に大きな影響を与える』ことが明らかです。ちょうど、関西人が、標準語のテレビのニュースやドラマを見ているのに、関西弁のアクセントになるのと同じですね。ちなみに、現行の中学三年間の英語の授業の総時間は、何時間だと思いますか?なんと『420時間!』です。それだけの時間、生徒の脳のミラーニューロンは先生の英語を真似しているのです。意識の高いお母さん達が、お子さんを英語教育に力を入れた学費の高い私立中学にお受験させるのも納得します。
私が、英語をやり直した時、口や舌などの使い方、音の響き、発声など、日本語と全く違うのに驚きました。仕方なく、中学レベルの英単語から、一つずつ正しい発音とアクセントを確認しながら覚え直しました。でも、学校で何年間も勉強しているのに、時間とお金を掛けてやり直さないと英会話が出来ないという教育は変です。 だから、現在英語を指導している公立の中学校や小学校の先生方へお願いです。生徒達の未来は、あなた方の英語の発音に大きく左右されます。強い責任感と自覚を持って教壇に立って下さい。感度の良い耳と柔軟な脳を持つ子供達は、悪い発音ですら正確にコピーしてしまうのです。まず、先生自身が英語のスキルを磨いて、特に発音を矯正して下さい。現場の先生全員が英語力を上げる努力をしていけば、「英語が話せない日本人」というのは過去の話になります。そうすれば、生徒の将来だけでなく、日本の未来さえも大きく変わっていくことは間違いないのですから。 ミント音楽教室
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