私自身、身体的に100パーセントピアノに向いていたとは言えません。手も小さい方です。でも、長年の経験などから、ピアノを弾くのに向いた身体について感じたことを、まとめてみました。ただし、演奏するには耳、感受性、性格、努力、表現力など他の条件もかなり影響します。だから、あくまでもピアノに向く身体条件のみの目安として受け止めて下さい。
優雅に弾いているように見えて、 実はアスリート系(?)
一般的には大きい方が良いと思われがちですが、大きいだけで指が動かないという不器用なタイプもいます。指が長くても「オクターブは弾きやすいけど細かい動きは指が絡まる感じだから苦手」という人もいます。また、一見普通の大きさなのに親指と小指が極端に短く下がっている手は、バランスが悪くフォームが崩れやすいです。小さ過ぎる手の場合は、やはり不利になります。その場合は、手に向いた曲を選んだり、和音の音を抜いたり指使いを工夫して弾きやすくします。でも、広がる手なら大抵の曲は弾けるので、最低でも1オクターブはつかめるように指の間を広げましょう。ストレッチをする時は、指の付け根ではなく、各指の骨の分かれ目(手首の上)から広げるように意識しましょう。和音を掴むためには、手の骨格がしっかりしていて握力が強い方が良いです。だから、ピアニストは、手のひらが厚い人が多いです。ピアノを弾くうちに、手の周りに筋肉が付くようです。また、曲のレベルが上がりメロディーをオクターブで弾く時は、薬指と小指が長めだと弾きやすいです。他に、指先の感覚が鋭いと、習得が早く強弱もコントロールしやすいです。手先を使う遊びが得意な子は有利です。指を速く動かすスピードについては、スポーツの運動神経と同じで、生まれつきの部分が大きいです。でも、練習(努力)により、ある程度の速さで弾けるようになります。超絶技巧的な速さで弾けるような指の運動神経は、残念ながら先天的です。
ピアノを弾くことは、見た目より身体の負担が大きいので、上半身を支えるための強い背筋が必要です。背筋が弱いと姿勢が崩れて、手だけで弾こうとするため、無駄な力が入り疲れてしまうという悪循環になります。また、左右に広がる鍵盤を素早く移動し、力を上手く乗せて弾くには、座った状態での強い体幹も必要です。だから、ピアノが上手い人は、椅子に座った状態での下半身が非常に安定しているのが一目瞭然です。テニスで国体に出た経験がある大人の生徒さんにピアノを教えた時に、初心者でも座り方が完璧で驚きました。身体の負担を減らし効率良く力を生かすのが背筋と体幹で、スポーツの世界と同じなのだと実感しました。
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柔軟性があると、音の強弱をコントロールしやすくなり、疲れや痛み、手の故障などが出にくいです。手首とひじはクッション的な役割をし、音にも大きな影響を与えます。音色も豊かになります。また、左右の手が交差する曲などでは、肩の柔軟性も求められます。固いと表現する余裕が無いからです。ちなみに、私は床に付いた手を手首を回転させて、ほぼ元の位置に出来ます。(※そこまでの柔軟性は不要です)
管楽器や弦楽器は、一度に一つの音しか出せませんが、ピアノはメロディー以外に伴奏、サブメロディーがあります。つまり、ピアノは他の楽器より覚える音やリズムがより多く複雑なため、その分練習時間が長くなります。仕上がるまでに時間もかかるので、他の楽器が羨ましい時もあります。そのため、持久力が必要で、練習時に指や腕がすぐ疲れたり痛くなってしまう人は、上達の速度が遅くなります。一方で、速く弾く、強い音を出す、素早く移動する、切れのあるリズムを作るのは瞬発力です。つまり、ピアノを弾くには、手や腕の筋肉の持久力と瞬発力の両方が必要なのです。だから、ピアニストは、見た目よりもアスリート系で、ピアノを弾くための筋肉が発達しています。
上に挙げたように、ピアノを弾くことは、柔軟性、筋力、体幹などが必要で、意外にもアスリート系です。以前、お正月のテレビで、リストの『ラ・カンパネラ』を独学で弾いた漁師さんが出ていました。職業柄、背筋力や瞬発力、持久力もあり、船でバランスを取りながらの作業は体幹がしっかりしているはずです。毎日7時間ものピアノ練習を可能にしたのも、人並み以上の筋力と身体の柔軟性があったからでしょう。もし、テレビを見て感動した普通の人が長時間の練習を真似したら、上達どころか手を痛めてしまいます。また、漁師さんの仕事には握力も必要なので、元々ピアノを弾くのに適した身体を持っていた、と言えます。でも、ピアノに向いている身体の条件が、最初から全て揃っている人は少ないでしょう。どれも、ストレッチや練習などで徐々についていく可能性はあります。私自身は、演奏の仕事をしていた頃、身体をほぐし体力を付けるため、週に2、3回はプールで泳いでいました。ピラティスも5年間習いました。正しい身体の使い方を意識することで、ピアノや声にも良い影響がありました。その経験で、以前より生徒さんの身体の使い方を細かく見られるようになりました。だから、ピアノを弾く人は、意識してストレッチをしたり、スポーツを習慣化することをお勧めします。ポジティブな気持ちを持って、根気よく練習を続ければ、少しずつピアノに向く身体に変わっていきます。 ミント音楽教室※最近、こんな記事も書きました♪『コンサートピアニストになるための必須条件とは?』https://www.mintpiano.net/blog/84717/
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