文章から音が聴こえてくる青春物語♪
表紙は蜜蜂の飛び回る季節のイメージ

小説『蜜蜂と遠雷』の魅力


小説『蜜蜂と遠雷』は、ピアノが好きな人にお薦めの本です。

この本は、2017年に直木賞、本屋大賞とダブル受賞したベストセラーで、昨年の秋には映画公開もされています。

累計発行部数は、何と134万部で、今も売り上げを伸ばしているそうです。

恩田陸さんは、水戸一校出身で、一高の歩く会を描いた『夜のピクニック』は映画化されています。

私は、すぐ隣の水戸三高(音楽科)出身なので、通学路が同じだったこともあり、親近感があります。  

その当時、通学路からは、毎朝、音楽棟からのピアノの音が聴こえていました。(今は、防音対策しているはず)

当時、朝練に励む音楽科の人達のピアノを、高校生の恩田さんも、通学時に耳にしていたかもしれません。

鈴木成一さんの本の装丁も素敵です。野原の色ってこんな感じ、と思います。

一見、抽象画風でシンプルですが、じっと見ていると、光や風、野原の草花の匂いが感じられそうです。
   
この本では、様々な個性や背景を持つ4人のピアニストが、国際ピアノコンクールに挑戦しています。

それぞれが、音楽や生き方を模索しながら影響し合い、成長していく物語です。

ピアノ経験者から見ても、あるある!と頷けるところが多いクラシック音楽界のバックステージ物語です。

4人とも才能溢れるピアニストなのですが、私は、天才肌ではない地味な明石が身近に感じて一番好きです。

楽器店勤務のサラリーマンの明石は、音楽への夢をあきらめられず、最後の覚悟でコンクールに挑戦します。

彼の言葉は心に残ります。以下の文章は、明石の心の声の抜粋です。


~何かが上達する時というのは階段状だ。

ゆるやかに坂を上るように上達する、というのは有り得ない。

弾けども弾けども足踏みばかりで、ちっとも前に進まない時がある。

これがもう限界なのかと絶望する時間がいつ果てるともなく続く。

しかし、ある日突然、次の段階に上がる瞬間がやってくる。

なぜか突然、今まで弾けなかったものが弾けていることに気付く。

それは、喩えようのない感激と驚きだ。

本当に、薄暗い森を抜けて、見晴らしのよい場所に立ったのかのようだ。~※


私も、この感覚がよく分かります。

もしかしたら、恩田さんも、こういう気持ちで小説を書き続けてきたのかもしれません。

明石の音楽に対する真っ直ぐな気持ちや謙虚な人柄に「頑張って!」とファンのように応援したくなりました。

また、この本は、『過去の自分が夢見ていたこと、憧れ、挑戦したこと』などを思い出させてくれます。

ピアノを弾かなくても、スポーツの試合、受験、資格試験など、人それぞれ何かに挑戦した経験はあるでしょう。

コンクールに挑むピアニスト達の思いと、何かに必死でチャレンジした過去の自分の姿が無意識に重なります。

滅多に思い出すことがない、その時のヒリヒリした感情(情熱、失望、嫉妬、緊張感など)が引っ張り出されます。

『蜜蜂と遠雷』は『夢への憧れと挑戦がテーマの普遍的な物語』だから、幅広い層の人達に読まれるのでしょう。

皆さんも、『蜜蜂と遠雷』を読んで、昔の自分に会いに行きませんか?

         ミント音楽教室


※この期間を、「サイレントピリオド」と言うそうです。ご興味のある方は下の茂木先生の動画を見て下さい。

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